Team JB Staff writer, Naomi Shibuya Strauss

前代未聞の日本紹介本、谷山雄二朗の ‘Master of Japan’ (小社刊)の勢いが止まらない。

予定調和を徹底的に排し、歴史、武士道、文化、社会問題、政治、頼朝、江戸、’単一民族’、東京五輪から食事・温泉にいたるまで幅広く扱っているのがウケているのか、アマゾンのトラヴェル・ランキングで6位に入っている(2019/1/19現在)。しかも、単体では「ベストセラー1位」マークも表示(2019/1/18現在)されるなど、発売から1ヶ月経た今も進撃を続けている模様だ。

「訪日客一億人を目指しているので、東京2020ないしはパリ五輪にピークを持っていければ、ぐらいに考えていたのでちょっと意外だね。燃え尽き症候群にならないよう、気をつけるよ」。そう謙遜する谷山だが、こう付け加えることも忘れない。

「本をご購入してくれた方には、感謝の気持ちでいっぱい。万人ウケする作品じゃないので、気軽に構えているんだ。国籍問わず、皇居前広場や東京タワーで知り合った外人たちにフェイス・トゥ・フェイスでプロモートしているのが功を奏しているのかな。ただ、本当の勝負はまだまだこれから」。

Japan Travel のランキングをみる限りでは、上位2冊はオーストラリアの Lonely Planet社のガイドブックが不動の地位を固めている。しかも、恐るべきことにトップ10のうち殆どが同社の作品であることに、谷山は衝撃を受けているという。

「日本人が書いた日本紹介本が、まったくないんだな。内村鑑三や新渡戸稲造が英語で本を書いてから120年もたっているのに、ちょっとこれは問題だと思う。赤い靴ならぬ青い目の外人旅行者の視点から見たJapanは、すでにありふれているんだ。ところが日本人のアングルから描かれたものが皆無に等しい。戦後の英語教育がいかに間違ったままきちゃったか、ということの裏返しかもしれない。大問題だよ」。

誇りをもって自国を世界にアピールする気概が、日本人一人一人に求められる時代。

グローバルな読者がより多い Amazon.comのサイトでは、はやくも香港やアメリカ西海岸のシアトルなどから、ポジティブなレビューが舞い込んでいる。

‘Master of Japan: Cultural Learnings of the Land of the Rising Sin’ は、卑弥呼、古事記、天皇家から始まり、アキバ、国際化、国内問題、雑学まで盛り込んだ「ちゃんこ鍋のようなオールラウンダー本」(本人談)。

「非難、批判どんどん来いって!ただでさえ日本人は世界スタンダードから見たら大人しすぎて自己主張がたりない。沈黙は美徳なんて時代遅れもいいところ。そんな過去の固定観念に未だに縛られているから、日本の存在感は海の向こうでは皆無に等しくなってきているのさ。相互理解を深めるためにも、どんどんケンカしたいね」。そう大声で笑う筆者は、たしかにドラえもんやNARUTOをユーモアたっぷりに持ち出しつつ、著作のなかでは賛否両論が分かれる歴史問題、尖閣諸島問題などでも堂々と持論を展開している。

過去最高の750万人を突破した韓国人訪日客だが、あいにく韓国での売り上げはさほど期待できなさそうだ。その点を指摘すると、「まったくNo problem. ぼくには日本が好きで好きでたまらないコリアンのチングー(友達)もいるし、たとえ見解が異なるからといってお互いの歴史に対し目の上のタンコブみたいな扱いをしていたままじゃ、話にならない。だから本のなかでは1590年代に二回も李氏朝鮮を侵略した秀吉のことを晩年には錯乱してしまった「Bald Monster」(禿げモンスター)と揶揄しているし、日本人だからといって1から100まで何から何でも自国を礼讃するだけじゃあ、TRUTHは決して見えてこない。少なくともぼくはそう考えている。ユーモアを胸に未来志向がいいね」、と著者の谷山雄二朗は答えた。

いずれにせよ、この本が独創的な一冊であることだけは間違いない。