ソウル LOTTEデパートの前で出会った、意外な人々
Nov. 8th, 2015


「虎穴に入らずんば、虎児を得ず」  第2話



この夏、MERSが韓国で蔓延し、訪韓観光客が激減したことは大きく報道された。
現に、午前中の明洞のショッピングストリートを行き来する人々の数は、「スコッツボロー ガールズ」の撮影で訪れた前の年の春に比べれば、明らかに減った感が否めない。

とはいえ、日本人女性2人組の姿がちらほら垣間見えるかと思えば、中国人団体観光客の群れがゾロゾロ移動しているのも目立つ。しかし青空の下ながら、渋谷や秋葉原に大勢押し掛けている青い目をした白人観光客の姿は、ほとんど見当たらない。化粧品やカジュアル服の売り子達が、店頭で客の呼び込みを積極的に行っている。そうした中、野武士谷山某はせっせと「草の根外交」を展開せんと相変わらず “Good morning! Do you speak English!?” と行き交う現地人に声をかけ、向こうが英語で対応してくれれば「日韓路上会談」に持ち込まんと話し合う。自分で言うのもなんだが、友好関係構築に余念がない。

リュックと手持ちのバッグには、60枚ほどのDVDがギッシリ詰まっているのでちょっとした「筋トレ」状態ではあるが、勢力的に話しかけては「イルボンと、コリアは歴史問題でいつまでも政治的に敵対しあっているべきではない。もっとチングー(トモダチ)として、分かり合おうではないか。これは IANBU(慰安婦の韓国語発音)のドキュメンタリー映画ですが、なにも日本人の考えを押し付けるものではありません。こうした考えもある、ということを知って欲しいのです。よって今日、お家に帰ったらマッコリのグラスを片手に観てみてくださいね」 - と一枚、二枚、三枚と手渡し、最後は笑顔&握手で別れる。このシンプルなアクションを、ただただ繰り返してゆく。

と、ふと気付いたら Lotte Department Store (ロッテ デパート)が見える場所まで来ていた。その時だった。ある「新聞」を黙々と無料配布している男女スタッフたちの姿を発見したのは。

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すぐさま野武士は彼らに近づき、一部もらった。何を隠そう、それは中国政府が世界展開する英字新聞 “CHINA DAILY”- October 3- - November 5, 2015 edition だったのである。みると第一面左上隅には、同国の李首相の写真が掲載されている。「21世紀は、情報戦争の時代」と指摘するメディアは少なくないが、この日、11月1日の午後から開催予定の日中韓首脳会談に合わせチャイナデイリー紙はまさに「情報戦争」を仕掛けていたのだった。プロモーションという名の。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は「中国共産党は、対外宣伝費を年間9000億円かけている」(後に二兆円とも言われた)と指摘されているが、まさにその実態をソウルで垣間みた瞬間であった。


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その時だった。

自分がパシャパシャ写真に撮られていることに気付いたのは。撮影していた30代の清廉された感のあるジェントルマン風のその男性に、野武士は笑顔で挨拶した。 “Hello sir. It’s a beautiful day indeed. May I ask you who you are!?” (こんにちは。いい天気ですね。というか、すみません、どなたでしょうか?) 結論から言えば、驚いたことに彼はチャイナデイリー紙の上級編集者(中国人)であった。しかもキャメロン英首相の如く気品あるブリティッシュ英語を、惜しみなく駆使してくるため、「中国人」と会話している感覚はまったくない。とりあえずここでは、同氏の名前を王氏にしておこう。

野武士は、単刀直入に聞いてみた。

「まさか御紙は、日中韓首脳会談にあわせ香港やら北京からプロモーションに来たんですか!?」

苦笑いする王氏。ドンピシャ、という訳だろう。
聞くと彼は、北京から来ているという。さらに隣りにもう1人、同僚らしき人物がいたので話しかけるとその男性も、これまた流暢な英語を操る。なるほど、今や世界を席巻しつつある共産党プロパガンタ紙 “China Daily” の作製に当たっているのは、こうした英国帰りのエリート風編集者たちだったのである。現に、王氏は大学時代を含め8年間イギリスで教育を受けたことを教えてくれた。

念のため日本の読者のみなさんに申し上げておきますが、我が国では殆ど馴染みのないこの英字新聞とはいえ同紙今、先述した豊富な資金源をもとにグローバル展開を進めており飛ぶ鳥を落とす勢いである。しかも米国版、ヨーロッパ版、アジア版とそれぞれ地域に合った紙面作りを紙媒体のみならずネットでも展開している。その影響力は急速に伸びており、発行部数900万前後といわれる読売や朝日とは比にならない。なんせ世界人口70億のうち、俗にいう「英語圏」に確実に浸透するパワーをもっているのだから。欧米のみならずアジア、アフリカと「英語を理解できる人々」には基本的には訴える力を持つ。

数ヶ月前、ぼくがシアトルに滞在した際も、路上の自動販売機で普通に販売しているのをみて驚愕したことも付け加えておこう。



「海外では揉めごとを起こせ」谷山雄二朗
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そしてここで極めて重要な点は、この “China Daily”の反日論調が、朝日新聞の100万倍 - と言っても過言ではないレヴェルだということに他ならない。歴史を政治利用せんとする中国共産党政権が誇る「最強の日本叩きマシーン」こそが、この日これまた偶然バッティングしたこの英字新聞だったのだ。

“What are you here for!?” と、今度は逆に王氏が質問をぶつけてきた。待ってましたと言わんばかり、野武士はバッグから「ブツ」を取り出し、「キミがチャイナデイリーを配布しに来たんならば、こっちはこれを韓国の人々に手渡しに来たのさ」と、一枚と彼にプレゼントした。興味津々にLinkIconDVDジャケットを凝視していたかと思うと、”Uncomfortable Truth of the Comfort Girls” (不都合な慰安婦の真実)というサブタイトルを指差し、「ああ、この作品はカンフォート・ウーマンがテ−マなんだ」と頭をタテに振った。

余談だが、去る2015年10月9日にUNESCOが中国が申請した「旧日本軍による”南京大虐殺”の資料」を世界記憶遺産に登録したことは記憶に新しい。そして翌日、China Daily紙がその事を大々的に報道したことも、言うまでもない。


そして驚くべきことに、そのわずか2日後には、”China to consider joint UNESCO nomination for ‘Comfort Women’ files” (「慰安婦」資料も、関連諸国と連携しユネスコ世界記憶遺産申請を検討 - 中国政府) と報道している。



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ご存知の読者もいるかと思うが、この記事では「UNESCOの合同委員会が、慰安婦資料を申請するよう勧めている」と書かれてある。本当だとすれば、事実関係を無視した暴挙以外の何ものでもないし、本来「中立」であるはずの国連機関ユネスコの本旨を愚弄する行為だからだ。

とはいえ、現実問題としてこれは我が国がいかにこの問題において負け戦を戦っているかを改めて裏付けている。「沈黙は美徳」といった旧価値観に縛られ、1991年8月14日にキム・ハクスン氏が「最初に実名でカミングアウト」して以来、言うべきことを堂々と国際社会に発信してこなかったツケが回って来ているだけのことだ。これまでの日本政府の無為無策を糾弾しすぎることは到底ない。だいいち、英語でまともに国家主張をロジカルに展開できる政治家がこの国にはいないのだから、話にならない。

よって我慢しかねた谷山某如き歩兵が反撃せんと七転び八起きしている訳だが、なんせあちらの "China Daily" は、年間9000億円ものバックアップを事実上受けている大国営企業。それに比べれば、2013年にぼくが設立した JB - Japan Broadcasting.net は、残念ながら所詮は「1円会社」でしかない。そして、その事業の一つとして「スコッツボロー・ガールズ」の製作・販売を今年からスタートした訳だが、規模からいっても資金面からいっても現段階では北京の足元にも及ばない。ジャイアン vs のび太と同じで通常の力では、到底太刀打ちできるものではない。

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とはいえ、まさかソウルの明洞でまさかJBの事実上の「ライヴァル」(向こうは「屁」とも思っていないだろうが LOL)である "China Daily紙" の責任者と第三国のソウルで運命的に遭遇するとは。ロマンティックな見方をすれば「日中情報戦争」・「日中歴史戦争」の前哨戦のようでもあり、これまた実に不思議な巡り合わせではないか。そこで思わずいたたまれなくなった無鉄砲な野武士は、鼻息荒く王氏に先制攻撃を仕掛けたのだった。

“Excuse me sir, may I ask you why your mighty newspaper perpetually enjoys aggravating tensions between Tokyo and Beijing by using the so called “history”?! “ (ちょっとお伺いしたいのですが、チャイナデイリー紙がひっきりなしに「歴史」を利用し、反日宣伝を行い、日中関係を緊張を高めてばかりいるのは何故なんでしょうか?!)


 しばらく空白があったあと、その沈黙を破った王氏の答えはじつに驚くものであった。




(「虎児に入らずんば、虎児を得ず」第2話 おわり)  


 谷山雄二朗 - Editor in chief for JB 編集長






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