虎穴に入らずんば、虎児を得ず」 最終話 - 第5話
  Nov. 27, 2015

              Editor in Chief for JB 編集長 谷山雄二朗





「軍艦島」も強制連行だろう


すると何を思ったか、iPはいきなり想定外の質問をソウルの路上でぶつけてきた。
「What do you think of “Hashima?” 」と。
ハシマ?! 鹿島?鹿島建設!? いや、それとも対馬のツシマとの間違えかとも思い問いただしたものの、違うという。二、三分やりあった後、結局彼が最近世界遺産登録された長崎の「軍艦島」(別名:端島)について聞いていることがわかった。
どうやら彼らは2人とも、歴史問題に相当関心があるようだ。

私は言った。
「軍艦ジマ......いや、ハシマへの日韓の見方が異なることは知っている。ただ、あの島に関しては、1868年の Meiji Restoration の流れを汲むものだ。日本の近代化に欠かせない重要な拠点であり、最盛期には何百人、何千人もの人があの島に住んでいたんだ。ぼくは現地に行った事がないが、とにかく当時は学校もあり、アパート団地もあり一つのコミュニティとして存在していた」
特にiPの方は、予想以上に日本の近代史に精通しているようで、LGに対し明治時代の近代化についてハングルでいろいろ説明しているのがわかる。ただ、JYJのジュンス似で旭日旗嫌いのLGのほうは、iPhoneほど歴史を学んでいるわけではなさそうだ。

私は言った。「韓国政府が、戦前に朝鮮人が”ハシマ”に強制労働された」と主張していることは知っている」。「“Forced”, right!?」(強制されたんだろう?!)といきなりLGが突っ込んでくる。余談だが、日本の高校生、大学生に比べ韓国のそれの英語力は圧倒的だとこちらに来て痛感させられている。例えば、ここでLGはスラッと “forced”という言葉を出して来たが、果たして我が国の大学生に同レヴェルの語彙力があるかといえば、残念ながら答えはNOだろう。ソウルで筆者が英語で話しかけた若手韓国人のうち、じつに9割近くが極めて高度な英語会話能力を有していると感じたのは、単なる偶然なのだろうか?!


野武士は、すぐさま反論した。「キミは”forced”という表現を今用いたけど、それは韓国の教科書にそう載っていただけだろう。日本の教育ではそうは教えない。21世紀現在でも、インドネシア人やフィリピン人はより裕福な香港やサウジアラビアにメイドさんとして出稼ぎに行くでしょう。それと同じで、ぼくの理解では、戦前の朝鮮の人々は貧しかったのでより裕福な日本本土 = 即ち ”ハシマ”に出稼ぎに行っていたということであり、それは1910年に朝鮮が日本の植民地になってからも同じだった。つまり日本人が軍艦島の炭坑に出稼ぎに行ったように、朝鮮人も”ハシマ”に出稼ぎに行ったにすぎない、と少なくともぼくは解釈しているよ」

LGとiPhoneは、五秒間ほど沈黙した。そこには確実に考え方の違いが存在した。とはいえ、我々はなにもこの突然勃発した「日韓路上会談」でいきなり口論を激化させた訳でもなかった。

 そもそも私は、”Excuse me, do you speak English?!” と挨拶がてら彼らに声をかけた際、次のように言ったのだった。
「I came from Tokyo. 日本と韓国は違う国だ。だから当然ながら物事の考え方は、異なる部分がある。それはしょうがない。とはいえ、両政府にすべてを任せておくだけでは残念ながら我々は半永久的に本当の意味でのチングーになることはできない。最も近い隣国であるにもかかわらず、”歴史認識”で両国民が敵視しあい続けるのは最高に最低じゃないか。そう思わないか? 政治家というのは、票のためにはなんでもする。適当な嘘もつく。韓国にもLiars (噓つき)は沢山いるだろう?! そう、だからこそ我々一般国民同士のコミュニケーションこそが決定的に重要なんだ。だからぜひともこのDVDを観て欲しいんだ。批判は大歓迎。大事なことは『こういう考え方も世の中にはある』ということに気付いてもらうことなのさ」、と。



充分想定内だが、LGが、再び "強制連行" のカードを切ってくる。

「端島も強制連行だけど、韓国では、戦前、朝鮮人女性が日本軍に “forced”=強制連行され、性奴隷として扱われ、それで殺されたと学びます。しかも Human trafficking =人身売買だよね」 と、執拗に例の画面を誇らしげに強調してくる。


人身売買 ソウル JB.JPG


私は直ちに反論した。「Wait a minute. 強制連行という”常識”だが、例えば欧米のアジア近代史の代表格の1人であるChicago大学のBruce Cumings教授は、著書 “Korea’s Place in the Sun”の179ページでこう指摘している。”Many Comfort Women were recruited by KOREAN MEN” - 慰安婦の多くは、朝鮮人男性によって斡旋された - と」
彼は、何も言ってこない。私は続ける。
「ぼくは何も戦前、日本軍が行ったことすべてを正当化するつもりはない。当時の女性は、朝鮮のみならず日本本土でも貧しい家庭の女性は飢饉の時には置屋に売られたし、選挙権もなければ今で言う”Human Rights”という崇高な理念も事実上与えられてないに等しかった。Patriarchal society =家父長制だった。とはいえ、日本人が朝鮮人女性二十万人を “FORCED”したのが事実とまったく異なることは、先のカミングス教授の指摘をみても明らかじゃないか。朝鮮人のヤクザ、というのか斡旋人たちが、同じ朝鮮人女性をお金儲けのために利用したというピクチャー(構図)を、どうして見て見ぬフリするんだい!?」
相手は黙った。野武士は続けた。

「iP、とはいえ確かに例外はあったとは思う。慰安婦募集の新聞広告に応募してきた女性たちの中には「食堂で働く仕事」と説明されて ”deceived” = 騙されてしまったじつに不幸な人々がいたことも事実としてあったと思う」
iPhoneは鼻息荒く、すかさずそこを突いてくる。
「ほら、そうだ、それだよ。Deceived - Korean women were all tricked to become Ianbu! - 韓国人女性はみんな騙されたんだ」
「ちょっと待って。なんでそう極端な結論に急ぐんだい!? Calm down 、落ち着け。二十万人を騙す!? 超一流のペテン師じゃなくちゃそれだけの人数を騙せないと思わないか?! それが現実論としてありえるのか、冷静に考えてみてくれよ。だいいち、当時の日本軍は米英と戦争していたんじゃないか。200,000もの女性を騙すために労力を使うほど暇じゃなかったと考えるのがフツーじゃないのかい!? 」

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「海外では揉めごとを起こせ」谷山雄二朗
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韓国でスコッツボローガールズ・谷山雄二朗.jpg




元慰安婦 ムン・オクジュ氏と、"CONCUBINES" (高級娼婦)


余談だが、1992年4月13日に日本政府を訴えた原告団の1人、元慰安婦のMoon Ok ju氏は著書「ビルマの慰安婦だった私」(梨の木出版/ 1996) のなかで、自分が騙されたと述べている - しかし同時に「12才の時に、私はキーセンになると言ったら、兄に”馬鹿野郎、おまえは女郎になるつもりか”と怒鳴られた。でもキーセン(事実上の娼婦。以後参照)になるしか私の未来はなかった」とも告白しており、その証言には明らかに一貫性が欠けているというのが筆者の印象である。


この日、本来ならば反日教育の急先鋒と言われる西大門刑務所に行く予定だったのだが、それどころではなくなってきた。野武士はいっきに捲し立てる。
「iP, LG, キミたちは知っているだろう。KORYO DYNASTY =十世紀の高麗王朝の時に、KISAENG SYSTEM すなわちキーセンというシステムが設立されたことを。今も昔も韓国で性産業が盛んなのは当時から千年以上続いているこのキーセン制度が、歴史的に続いているからだ。清涼里駅のそばにオーパルパル(588)という、遊郭みたいな場所が今も残っているし」
“スコッツボロー・ガールズ”でも、客を装いその置屋街を盗撮したシーンがある。

「NO, それはちがう。キーセンは、歌を歌ったり、踊ったりする.......」
「ああ、エンタテイナーだったと!?」
「そう、そうだよ、They were entertainers, the Kisaeng....」
「ゲイシャのように!?」
「そう、like the Geishas」
私は冷静に深呼吸し、目を観て言った。
「確かに、高麗王朝の時代、そして14世紀に始まる李氏朝鮮時代も最初はそうだったかもしれない。しかし、サンフランシスコ州立大学のセーラ・ソー教授は著書 “Comfort Women”の中でこう指摘している - “李氏朝鮮王朝の後半になると、Kisaengは、CONCUBINES (高級娼婦)と同義語になっていた”、と」

しかも、そう述べているのはソー教授だけではない。ブルッキングス戦略研究所の Katherine Moon 主任研究員も、著書 "Sex Among Allies" のなかで同様の見解を述べている。




会談は、ヒートアップしてきた。喉が渇いて来たが、非公式なため水も用意されていないばかりか、立ちっぱなしだ。
「でもイアンブたちは殺されたんだ。They were killed you know」
JYJのジュンス似のLGが、不満たらたらな表情で話の腰を折ってくる。
「Wait man, please wait....... 殺されたっていうけど、その根拠はあるのかい?! ぼくはその”殺された”って部分はどう考えても事実に反すると思う。だってさ、常識的に考えてみて欲しい。そもそも当時の軍隊に取って慰安婦は”必要”な存在だったのに、何故”殺す”必要があるんだい!?」  
いったい韓国の教科書では、何を教えてるんだろう?  逆に興味が沸いてくるから不思議だ。

するとiPが眉間にしわを寄せながら吐き出す。
「でも、Sex Slavesだったんだろ?それだけでも日本の罪は重いよ」
「それはNYTやBBCなど欧米メディアが好んで使う表現さ。慰安婦は、直訳すれば”Comfort Women” - ただそうした婉曲した言い回しが米国人たちには出来ない。だからまとめて性奴隷と定義しているだけで、本質的には大いに間違っている」
iPhoneも、LGも明らかに納得がいかないようだ。西大門駅から300メートルほどの大通りの歩道で、ABE - PAKとは異なる無名な三人による「非公式日韓歴史会談」がしかし確かに行われている。両国民の総意のギャップを埋めんと、無名の三名が誤解を恐れず己の考えをぶつけ合っている。これこそ未来志向の日韓関係への出発点ではないのか。昼下がりとはいえ、緯度が日本の東北と同レヴェルのソウルの午後が寒くなかった、と言えば明らかに嘘になる。とはいえ私は決して空気が冷たいとは思わなかった。非公式路上会談への情熱がそれを遥かに上回ったからである。

一方的な「韓国の正しい歴史認識」に疑問符を投げかけるべく、まず私は再びサンフランシスコ州立大学の Sarah Soh教授の名前を出す事にした。議論するときは、確実なる証拠を提示せねば説得力がないことは言うまでもない。そこで言った。彼女が書いた英語のノンフィクション “Comfort Women”の中に、次のような指摘があると。

「1994年のオランダ政府報告書は、次のように述べているんだ。”慰安婦システムは、主に Prostitution = 売春システムであった”と。これは日本政府の公式会見ではなく、オランダ政府の公式見解です。そしてまた、確かに同報告書は例外としての強制連行があったことも同時に述べている。が、それらは “isolated cases”=例外中の例外 で、イアンブ制度そのものは、基本的にプロフェッショナルの売春システムだったと結論づけた。これもまた韓国の教科書には、まず絶対に載らないTRUTH OF HISTORYなんだよ」

iPhoneは目を丸くしたまま、黙りましたね。

しかしやがて彼は自らの沈黙を破った。「そのサンフランシスコ大学教授は、アメリカ人だろう。1人の米国人の見方にすぎないのではないか」
「いや、残念ながらセーラ・ソー教授はキミたちと同じ韓国人であり、本名を Chunghee Sohといいます。今も韓国国籍かもしれません、ないしは米韓の二重国籍。その彼女が書いた本の中に、今言ったオランダ政府の報告書が紹介されているのです。ちなみにオランダ政府の報告書は、主に慰安婦システムが売春行為であったと断定すると同時に、強制連行されてそれこそSex Slave扱いされた不幸な女性がいたことも指摘しています」

iPhoneと、LGは再び静かになった。それもそうであろう。何もそれは日本人として勝ち誇ったなどという陳腐な感情で表現できるものではなく、戦時下という苦しい厳しい時代を生きた人々の実態を把握し、日韓両国民がこの複雑な問題を乗り越えて最も近い隣人同士として輝ける未来を築いていくために通らざるを得ない「事実関係の確認」という名の作業であった。

私は言った。

「つまりぼくは、このComfort Women issueにおいて、”じつはこうした別の見方をしている人もいるんだよ”ということを、ぜひとも韓国の国民の方々にも知って欲しいんだ。日本が1910年から36年間、朝鮮半島を植民地化した。それはれきっとした事実であり、コリアの人々にとっては不幸な出来事だったと思う。ただ、当時はColonialism =植民地主義の時代だったんだ。繰り返すが朴政権が、2017年から国定教科書で韓国のみなさんに”正しい歴史認識”を強制することを決めたよね、余計なお世話かもしれないがこのままじゃこの国には、”Freedom of Speech”はなくなっちまうじゃないか。Diversity = 多様なモノの見方こそ、この問題に携わる日韓両国民をより自由にする。意見をぶつけ合う、妥協点を見出していく。違うかな?!」





「堤岩里教会虐殺事件」


するとiPは、大きな声で聞いた事の無いハングルの単語を放って来た。「この事件を知っているか!?」と。すぐさまLGがGoogleり、スクリーンを突きつけてくる。

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「提岩里教会事件」 - 聞いた事のない事件名だ。少なくとも、日本人が学校でこの事件を学ぶことはまずない。
詳細については読者各自でサーチして頂くことにするが、いずれにせよiPhoneが出してきたこの事件は、1919年に現在のソウル南部の提岩里という場所における虐殺事件だという。日本人巡査により、30名近い朝鮮人が弾圧、虐殺されたとWikipediaには書いてある。日本の教科書にはまず掲載されないものには違いない。韓国人の我が国に対する異常な反日感情が、じつはこうした日本人が知らない歴史的事件にじつは深く根付いているであろうことも、我々は知っておく必要はあろう。足を踏んだ方は過去はすぐに忘れてしまいがちだが、踏まれた方はその痛みを引きずるものだからだ。

我が日本人にしても、現に毎年8月6日と8月9日に広島と長崎で平和への祈り式典が行われるではないか。あれは「20数万人が、5,000℃の熱で瞬時に焼かれた痛み」、「米国の新型爆弾に踏まれた痛み」を顧み、追悼を捧げる純粋な行為である。

束の間の静寂を突然破ったのは、iPの次の言葉だった。

「ぼ、ぼくのグレート・グランパは、この事件で殺されたんだ」




"親日派"だった、iPhoneの曾祖父

まさに青天の霹靂だった。
その衝撃的な上記のセリフを吐いた、小太り大学生の眼鏡越しの目は真剣そのものだった。聞くと彼の地元は、他ならぬこの提岩里だという。
「曾おじいちゃんは、地主だった。それでxxxxxx 扱いされたんだ」
その xxxxxx の部分の意味が分からなかったので、詳しく説明してくれとお願いすると、次の画面を出して来たのだった。



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“Pro Japanese group” - つまり「親日派」ということだ。読者に誤解のないように申し上げておくが、このiPhone氏の英語は決して完璧ではない。よって部分的に私の解釈が間違っている可能性も否定できない。しかしながら、なるべく真相を掴まんと度々念を押し、「キミのグレートグランパは、このテイガンリー事件で殺されたんだね? 」と聞くと頷いた。しかし同時に、当時、地主だったため”親日派”扱いされたとも言う。となればこの1919年の事件で日本人巡査数名に射殺されたというよりも、「日本軍協力者」として同じ朝鮮人に殺されたとの説も成り立つ。正直、それが一体どちらなのかは残念ながら「断定」するまでには至らなかったのだが、どうであれ彼が言わんとしていることは、「朝鮮半島が日本統治下に入ったために、朝鮮人が不幸になった。そして自分の曾おじいちゃんはその結果殺された。慰安婦もその延長戦にあり、日本が我々を植民地にしなかったらああした悲劇は起こりえなかった」 - という一つのナレティヴであることだけは間違いない。

LGも、次の画面を野武士に突きつけて来た。

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- 「日本統治下朝鮮の後期、親日派が増えて行った」とハングルと、英語で表示されている


多少なりとも解釈の差異はあれども、基本的に韓国人の日本に対する「正しい歴史認識」とは、こうしたセオリーの下に成り立っていると考えて99%間違いなかろう。つまり強烈な被害者意識が大前提としてあるという点に他ならない。そしてそれをより増長させて来た責任もまた、残念ながら俗にいう「謝罪外交」を戦後繰り返して来た我々日本人にあることも。1992年1月、訪韓した当時の宮澤喜一首相は韓国の大統領にじつに8度も謝罪している。これだけでも異常なのに、そのわずか三年後には当時首相だった村山氏が「村山談話」なる不必要な謝罪文書を世界に発表し、中韓にまたまた「スミマセン」と跪いている。これでは北京、ソウル両政府が「これは使える。東京に贖罪意識を半永久的に植え付け、土下座させ続ければ日本弱体化につながり我が国は軍事的経済的外交を有利に進めることができる」- と勘ぐるのも当然のことである。

つまり「いい人」として「揉め事をしない」「自分が悪くなくても先に謝っておけば、その後は平穏な関係を築ける」という、国内でのみ通用する江戸時代の旧常識を現代においても続けている日本人の思考回路が、じつは韓国国民の「事実関係を無視した、徹底した日本悪玉論」に拍車をかけてきたことは否定のしようがない。2005年には当時の小泉首相までもが「コイズミ談話」なるものを出し、世界に対し事実上の謝罪を行っている。それを促したのが果たして外務省なのか、それともプロレスラー体格の飯島元秘書官なのか私は知らないが、日本人が良いと思って行ってきたことが、国際社会においてはじつは誤解以外の何ものも生んでいないことにいい加減気付かないことには、正直この国の未来は危うい。






"ABE DON'T APOLOGIZE" と、衝撃のウィスパー


そして、それを裏付けるかのようにこの日、2015年11月2日 - 日韓首脳会談がまさに行われているであろう最中に、iPhoneは “Abe don’t apologize”とつぶやいたのであった。
「Wait. Japan has apologized many many times since PM Miyazawa back in 1992」(ちょっと待ってくれ。宮沢首相の時から日本は謝罪ばかりしてきたんだよ)
「.............」
「その後も、ムラヤマやコイズミが頭を下げて来た。いったいいつまでキミは日本に”アポロジー”を要求するつもりなのか?」
「でもドイツは、ポーランドに謝罪したよ」
「日本もしたさ。しかも、ナチが行ったのはジェノサイドだ。あれは国家犯罪さ」
1970年3月、当時の西ドイツのブランド首相は、現にワルシャワを訪れ献花し、ユダヤ人虐殺に対し跪いて謝罪している。どこかの島国の元首相も何故か土下座したそうだが。「iP, もう一度聞くけど、キミは真剣に歴史問題において、未来永劫 “謝罪”なるものを求めているつもりなのか!? 答えてくれ」

 彼は、何か考え込むような仕草をみせた。ただ、この部分が今回の非公式「日韓路上会談」の肝の部分であることを、野武士は本能的にキャッチしていた。そして、その時だった。iPhoneは質問に答えるのことそのものをスルーせんとしながらも、実に小さな声で一瞬“Yes”と頷いたのを私は見逃さなかった。

そしてそれは同時に、朝鮮半島南部に根ざした異質な反日教育の負の産物の深刻度を同時に浮かび上がらせた。2013年3月に韓国朴大統領が「加害者と被害者という立場は、千年過ぎても変わらない」と述べた理由が、ついに納得する形で2015年11月の路上で判明したのであった。朴氏は、iPhoneのような現役大学生が「イルボンに謝罪を求め続けるのが普通」との思考回路を持っているとの報告を情報機関などから収集した上で、上のような発言をしてきたということなのだ。「国民が納得する形で、この歴史問題の妥協点をみつけたい」- と朴氏が主張したことは一度や二度ではないが、その背後にはiPやLGといった「韓国国民」の度を過ぎた “被害者意識”の存在があるのだ。

今だから告白するが、正直、彼の”Yes”のウイスパーを聞いた時、私は2015万トンのハンマーで頭をぶん殴られた位のショックを受けたのだった。まさか、韓国の大学生が朴大統領と同じ思考回路のはずがあるまい、とタカをくくっていたからである。ところが現実は違った。日韓の歴史問題が「解決」するためには、まだまだ時間を要するということを肌で感じた瞬間だった。


よって野武士は今、両政府同士による”政治解決”は安倍総理任期中の2018年までに充分に可能だろうが、本質的な意味での、即ち「事実関係に基づいた歴史認識」が韓国に根付くには、残念ながらまだ20年はかかるのではないだろうかと考えている。

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恥ずかしい国、日本


今夏の”安倍談話”の如く日本が前の戦争について「お詫びと反省」を繰り返すたびに、中韓のみならず世界中の人々が「ああ、やっぱり戦前の日本は悪だったんだ」と受け止めることもまた、結果的必然だ。これほどソーシャルメディアが発達した世の中では、尚更である。総理は談話で「先の世代には、謝罪を続ける宿命を負わせてはならない」と述べた。あれは正しかった。しかし、同談話のなかで「戦前の日本は国際秩序に挑戦し」という明らかに”謝罪”と受け止められる言葉を放った。その矛盾を今更指摘する気は毛頭ないが、現実問題として中韓両国民が今後も靖国を政治利用してアポロジーを求めてくることは「既定路線」である。なぜか。それは単に日本が「弱い国」だからだ。自分で自分を守れない半独立国家だからだ。確かに日本は、恥ずかしいことに独力では己を守れない国家ということになっている。


戦後七十年経った今も、「専守防衛」なる言語明瞭意味不明なる方針に縛られている。中国の軍事予算が20兆円を突破したというのに、未だに憲法改正に反対し、安保法案を反対に!と国会前で泣き叫ぶ不思議な人たちが大勢いる。なんて目出度い島国なのだろう。私は何も反米ではないが、安全保障を他国に任せっきりの「国家」など”Nation”とは呼べまい。政治的現実を無視し、憲法上の欺瞞を放置し、ワシントンの「慰安婦」としての立場に甘んじ、日本はこれまでやってきた。米国は “U.S -Japan alliance is absolutely top notch” 「日米同盟は、最強だ」と表向きは述べているが、内心では軽蔑している; 本音はこうだろう。「オレたちがいなければ、お前達はイチコロだ。領土も財産も守れまい。だから最終的には米国の言う事を聞け。ひれ伏せ」、と。

当然ジョセフ・ナイ氏もリチャード・アーミテージ氏もこうした思いを言葉にはしないだろうが、我が国が米国に戦後70年経った今もなお「管理」されていること、そして「監視」され続けるであろうことを「当然」とみているに違いあるまい。それもそうだろう、それは1945年9月2日から2015年今日まで事実上、極東の島国を自分たちの「コントロール支配下」に “Islands of Japan”をおいてきたのだから。それを "既得権益" という言葉で形容するならば、それを彼らが自発的に手放すことは考えられまい。


中国の軍事的経済的台頭、および混迷を深める沖縄の普天間基地問題は、我が国の「真の自立」を我々一人一人が考える絶好の機会ではなかろうか。国土の0.6%しか占めないあの南方の島に、なぜ73.8%もの米軍基地が未だにあるのかということを。そして自衛隊を憲法上、正式な軍隊としてなぜ未だに扱わないのかというその理由を。

強い日本になる、ことは何も戦争をする国になるということではない。その真逆だ。極端な言い方かもしれないが、日本が「米国の慰安婦」(笑)から脱却し、自分で自分を守れるストロング国家になりさえすれば、歴史問題も事実上「解決」すると私は考える者である。いや、今回ソウルで数々の「日韓路上会談」を行うことによって改めてそう痛感したのである。それは何も我が国の過去の歴史をすべて正当化する、といった陳腐な発想ではなく、歴史的事実は事実として認めつつも、「総理の靖国参拝を糾弾する」といった明らかに不当かつ不条理な米中韓の宣伝戦などには毅然と意見を異にする覚悟だ。だってそうでしょう、今からわずか七十年前、国家のために命を捧げ散って行った二十歳の若者やひめゆりの乙女たちが眠る場所に、国家元首も総理も堂々と慰霊に足を運ぶことを「許されていない」国が、果たしてこの地上のどこにあるというのでしょう?!

2600余年の歴史のなかで、ただ一度戦争に敗れたぐらいで、なぜ我が民族はここまで卑屈になる必要がありましょう。いつまで謝罪し続ける必要がありましょう。国家のために命を捧げた人々は言うまでもなくヒーローなのです。それは一昨年、8月15日に靖国神社からiPhoneを使って生放送を行った際に偶然出会ったLinkIcon米国人の言葉でもありました。

この21世紀の異常を、茶番を、そして偽善をそろそろチェンジしていこうではありませんか。

Strong Japan.
それは日本人の思考回路を変えるということと同義語である。

翌朝、2015年11月3日。トンデムン(東大門)の7 Elevenに行くと、前日の日韓首脳会談がトップ記事で報じられていた。


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そして同時に、事実上の「進展」がなかったことに対し元慰安婦が嘆いている記事も。



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日韓がこのイシューを乗り越える気配も、年内妥結の見通しもない。しかし野武士は確信している。

形式張った会談ゴッコを何度繰り返すよりも、ユニクロのヒートテックを着て行ったウルトラ非公式な「日韓路上会談」のほうが百万倍の現実的効果を上げたことを。そして、これからそれがじわじわと効果を発揮し、確かな未来の礎になるであろうことも。

日本人よ、怯む必要はない。堂々と、日本人として大きな声で英語で自己主張し続ければいいのだ。歴史問題とは、結局いかに我々が毅然と振る舞う事ができるか、その一言に尽きる。言葉の戦争なのだ。親日的にみえる米国人に媚び期待しているようでは、まだまだ甘い。何も彼らを敵に回す必要はないが、所詮はビジネスのために動いている人種だからだ。つまりこれからの時代、日本人が、日本人のために日本人として畏怖堂々とグローバル発信していくこと以外に、勝利の道は開けないと私は確信している。


読者のみなさん、最後まで御拝読くださりありがとうございました。




谷山雄二朗

Yujiro Taniyama - Japan Broadcasting.net 編集長 (うるさい日本人)

(「虎穴に入らずんば、虎児を得ず」 第5話 ・最終話 おわり)





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