天安門虐殺記念館に行ってみた

 

マスクをする理由

マスクをしている女性がいた。気温33度の6月の香港で、何故それが必要なのか理解に苦しんだので「風邪ですか」と聞いてみると、そうだという。しかし話しているうちに実は真相はまったく違うことが分かった。ここは、世界で唯一の「6.4天安門記念館」(現地の人々は、天安門虐殺記念館とか歴史館と呼ぶ)の 薄暗い館内。クーラーが効いている。三十前後と思われる彼女の名前を、とりあえずここでは陳さんとしておこう。彼女の告白を要約すると、次のようになる。

「一年半前、2014年に香港の民主化を求める “Umbrella Movement” があったでしょう。あの時、多くの大学生がデモに参加したわ。ところがなんとデモの最中にじつは意外な場所で、ありえないことが起こってたのよ – そう、中国本土で働いている彼ら学生の “親” の携帯に次々と中国政府関係者から電話がかかってくるようになった。つまり “アンタの息子・娘が香港で反政府デモに参加している。このままでは大変なことになるぞ。なんとかしろ” – という脅迫コールが、次々とかかってくる。ではなぜ、どうやって”身元が割れた” のか、不思議よね。何故だと思う? そう、香港市内のいたるところにじつは監視カメラが設置されていて、中共政府の圧力を受けた当局(香港政府)は民主化デモに参加している大学生たちの顔を一つ一つスキャンし、その個人を特定し、名前・住所・電話番号などの個人データーを割り出していったわけ。その流れで親に脅迫電話をする。うん、私がなぜ今日マスクをしているか分かったでしょう?」

 

監視カメラ

言論の自由を弾圧する中共の独裁統治体制は、最悪だ。それは名古屋や東京にいては到底わかるものではない。しかし彼女に会ったこの日、つまり天安門虐殺事件の27周年にあたる2016年6月4日 –  ぼくは中共の秘密警察による「自由の弾圧」というものを、直に肌で感じた。それもここ香港・九龍半島のオフィスビルが並ぶ繁華街で。

冒頭に挙げた陳氏の告白。事実だとすれば、怖ろしいことではないか。完全な恐怖政治が世界的金融ハブ・香港の喉元に、そう、まるでがん細胞のごとく今、侵蝕しつつある。1997年、香港は「屈辱の100年リース」から中国に返還された。その際、したたかな英国政府は “今後50年間は一国二制度:HKのデモクラシーは保証する” との条件をつけた。当時の中共江沢民は、それを受諾。つまり少なくとも2047年までは、”Hong Kong Democracy” は保証される「はず」なわけだ。しかしながら2016年現在、すでにその約束は反故にされつつあることは、陳氏の言葉に耳を傾ければ一目瞭然だ。彼女の瞳には曇り一つなかった。ぼくはその言葉を、信じる者である。

 

 

帰省できなくなる中国人留学生

それを裏付けるかのように、繁華街 JORDAN駅 D出口徒歩8分に位置するこの世界で一つしかない「6.4 天安門虐殺記念館」があるオフィスビルの1F・エレベーター前には”監視員” が一名常駐しており、入館者に名前、ID番号、パスポート番号、入館の目的など数項目を記入することを強制される。ここ”自由とデモクラシーの街” 、香港で、だ。(ぼくは テキトーな偽名を記入しておいたが。笑)

入館者が監視カメラで撮影されていることも、言うまでもない。現に、古びた建物の入口に入るとそれが見えた。その映像は当局により”分析” され、中共の恐怖政治を強化するための道具として利用される。陳氏によると、香港において民主化デモに参加し「顔をスキャンされ身元を特定された人物」に対しては、大抵の場合中国本土への入国禁止措置が課されるという。現に本土から香港特別行政区へ “留学” している生徒も多いらしく、彼らが ”ブラックリスト” に載った暁には故郷へ帰省できないことになる。また香港出身者と呼ばれる人々にしても、その大半のルーツは当然ながら本土にあるわけで、祖先を敬う中国文化:お盆やお墓参りも当然ながら不可能になる。中共当局はそうした香港市民の自由を巧みに奪いながら、締め付けを強化しつつあるわけだ。

 

 

 

天安門虐殺6.4 を学校で教えない茶番

南シナ海で今、中国共産党(中共・CCP)が行っているサンゴ礁埋め立ておよび軍事基地建設は、滅茶苦茶だ。軍事力に物を言わせ、小国ヴェトナム、フィリピンを完全無視し、やりたい放題。国際法など、無きも同然。ルールはただ一つ、「中共が決めたことが正しい。それが真実」。以上だ。

これは、1989年6月4日に世界に衝撃を与えた天安門虐殺事件を、中共が教科書に掲載させない言論統制措置一つみても明らかだ。館内で会ったある中国人男性は「小学校でも、中学校でも教えないので知らなかった。でも、高校生の時にインターネットの ”裏サイト” を通じて事件のことを知った。衝撃だった」と教えてくれた。つまり、人口14億人、GDP57兆元の世界第2位の経済大国では、天安門事件は「なかった」ことになっているわけだ。ぼくも記念館に来て学んだのだが、展示内容やドキュメンタリー映像などの証言によると「中共軍兵士は、家のベランダから天安門の弾圧の模様をみていた一般市民も次々と射殺」したらしい。「台所にいた主婦も、流れ弾に当たって殺された」と。ある証言者の中年男性は「果たして目の前で起きている中国人に対する虐殺が、同じ中国人によって行われているのか:信じ難かった」と述べていた。

 

館内展示の “It is worth notice that the China Red Cross had made a public announcement that there were 2,600 to 3,000 died in the event” (中国赤十字の発表では、犠牲者数は二千六百名から三千名。ただ、実際の人数は不明であり学者により大きな開きがある)という発表も、中共の手にかかれば「存在しない嘘」になるわけだ! 滑稽というか、単なる下品なジョークにしか思えないが、こんな茶番国家がBBCによると十年後には世界一の経済大国になるというのだから、これまた恐ろしい。しかも、中国のWang Yi 外相にいたっては海外メディア向けに「日本は歴史を直視し、反省せよ」とオウムの如く反復するのに余念がない。もう茶番もここまできたら精神病。「天安門虐殺」という自国の歴史ただ一つさえ直視できない中共が、日本に対して文句を言うなど厚顔無恥の極致。

 

 

相変わらず弱腰のプードル外交

にもかかわらず、我が国のプードル政府は毅然と反論一つせず、へらへらするのみ。なぜ日本政府は「中国は歴史を直視し、天安門虐殺を認め、自国民を奴隷状態から解放せよ」と欧米メディア前で言えないのか。真実を軽視し、事なかれ主義に甘んじているから日本は舐められるのだ。先日の米オバマ大統領の広島訪問の ”見返りに” 囁かれている「安倍総理の真珠湾訪問議論」に対しても、毅然と打ち消す姿勢が政府内からまったく聞こえてこないというのはいったいどういうことなのか。

「日本は戦時中に20万人を拉致レイプした性犯罪国家だ。南京では30万だ」と、これまた根拠なき真っ赤な嘘を国際社会に流布する一方で、「天安門事件はなかった」と開き直っているペテン師に対し、異議一つ唱えられない政府になど、税金を払う必要はない。安倍政権は消費税10%増税を、2019年2月に延期したが「歴史問題における主張・反論」だけは、いい加減これ以上延期しないで欲しいものだ。世界は今、情報で動いているのだから。

 

黙祷。

 

雄乃字

 

編集部注:本稿は、今日からちょうど一年前に訪れた経験を、その直後のできたてホヤホヤ状態でほぼ一年前に激暑の現地で書かれたものです。ワインも、ウィスキーも樽で熟成。あれから一年。

編集部注2:2017年6月4日本日、一年前の記念館訪問を記録したショート・ドキュメンタリーが発表されます。題名は “Tiananmen Didn’t Happen”。Googleって頂きインターネット上で、3時のおやつにぜひお召し上がり下さい

 

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